よくある質問(お母さんがクラスメートな気がする)


 「お母さんがクラスメートな気がする」の台本は、たくさんの上演のご連絡をいただいています。ありがとうございます。

 この台本の結末について、「美咲はいつまでみのりだったのか」という質問をよくいただいており、作家として考えていたことをまとめました。上演の参考としていただければと思います。

 なお、これが答えではないようにも思っていまして、上演する演劇部・劇団のなかで話しあい、出した答えにそって、演技・演出をしていただければと思います。

 

この台本は、生徒もご家族も楽しめるものを目指して書きました。ぜひ、演じることを楽しんでいただければ幸いです。


 みのりは美咲に「期間限定の乗り移り」をしていると思わせて、実はずっと「みのり」です。決め手となる伏線は、以下のセリフです。

職員
では、こちらの申請書を、(下手側を指さして)あちらの「乗り移りはこちら」という窓口に出してください。くれぐれも提出先を間違えないでくださいね。この前、「生まれ変わり・転生」の窓口に出しちゃって、戻ってこれなくなっちゃった方がいたので。

 で、おっちょこちょいなみのりは、期待どおり、申請書の提出先を間違えました。間違えたこと自体は、台本上は明示的には書いていませんが、全編をとおしてみのり性格から推察されるよう、みのりの人物像を描いています。

 この台本で、特に難しいのは、晴人の質問のシーンから、手紙、文化祭、ラストシーンで、「美咲は結局誰で」、「美咲は何を知っていて」、「晴人は何を知っているか」という点ではないかと思います。時系列で整理すると、こんな感じになります。

6月30日 質問
晴人から美咲への「お母さんではないか」という質問。みのりは、期間限定の乗り移りが終わらないように(バレたら強制送還)だから「みのりではない」と言うしかなかった。
7月14日 朝
ここは、台本で描かれていない。この日、みのりは、期間限定の乗り移りが終わっているはず。なのに。終わっていなかった。みのりは、書類の提出先の間違いのために、死後の世界に戻れなくなっていることに気づく。
7月14日 本番前・手紙
みのりは、伝えられなかった思いを晴人に伝えた。この手紙は、元気になった晴人から離れる決意でもあった。さらに「晴人に、再度気づかせないため」の布石でもあった。
7月14日 本番後
みのりは、本番後の興奮から、致命的なミスをする。(キンプリに反応)晴人は、キンプリに反応するところをみて、「これはみのりが残っている」と気づいているが、もう、それをどうこう言うつもりは、ない。お母さんには、お母さんの事情と考えがあるんだと思っている。

 これは、正直「うぐっ」となった質問でした(笑)。確かに……。
 上で書いたとおり、7月13日で乗り移りが終わると思っていたみのりは、7月14日の朝になっても、みのりのままでした。このタイミングで、みのりは、「死後の世界で、乗り移りの申請書類の提出先を間違えた」ことに気づきます。別の窓口に出しちゃって、戻ってこれなくなっちゃったことに気づくわけですね。
 そうなると、みのりは、美咲としてもう一度生きていくことになります。そのときに、晴人との関係をどう考えるか。これが、みのりにとっては重要な問題です。
 このとき、みのりは、「みのりであり続けること」は、晴人にばれてはいけないと考えました。現世の社会に大きな影響を与えてしまうことになるし、晴人の成長のためにも良くないのではないか。だから、晴人には言わないことにして、よりバレにくくするために、手紙を書いた、ということです。この手紙を書いているときの美咲の心情は、ぜひ、美咲役の方は想像してみてほしいなあ、と考えています。

 ただ、それはそうとして、タイミングの問題として「もっと落ち着いたときに出すのが自然では?」「わざわざ、本番の前に手紙読ませる必要はないのでは?」と言われたら、そうなのかもしれません。「うぐっ」となった理由はそういうところです。
 この点について、あらためて考えてみたのですが、みのりの性格から解釈をすることができると思います。直情型のみのりなら、「そうと決まったら早く動く」ということなのかもしれませんし、「本番前のドタバタだからこそ、晴人に伝えて、晴人に信じさせる」というみのりの作戦なのかもしれません。

このセリフ、不自然というか、違和感ありますよね。この違和感は「感じてほしい違和感」として書いていまして、「自分が好きな人をばらされて、こんな反応をする中学生はいない」という意味で書いていました。お客さんの中には、「あれ、もしかしたら、美咲かもしれないぞ」と、ここで気づく方もいるかもしれないなと。他方、このセリフは、美咲の気持ちとしては、「さすがに、ここまですれば、晴人は自分のことを美咲だと思うだろうという」みのりの作戦が出ている部分です。

「乗り移り」の規則は、シーン2の職員のセリフにあるとおり、
 ①知られてしまった場合は、その時点で「乗り移りは終了」
 ②関わった現世の人の記憶を消去
 ③本人は死後の世界に強制送還
ですが、それは、「乗り移り」のルールです。みのりは、申請書の提出先を「生まれ変わり・転生」の窓口に出してしまい、そのまま手続きが進んでしまったので、別のルールが適用されることになったのだと思います(たぶん)。死後の世界は割といい加減な感じに書いているのですが、こういうルールが整理されていない世界観を出すためです。